利用禁止ですか?テキストバージョン

利用禁止ですか? 誰でも利用できる公衆用端末機の設計情報
John Gill著 福祉システム研究会訳


1998.7.14 最終版

〔図中の単語〕弱視 盲 高齢 車椅子使用者 聾 難聴 失読症 関節炎

〔表紙〕

巻頭言

今やどこにでもある現金自動支払機などの公衆が利用する端末機について, 大多数の人は使い易くて当然と思っているが,虚弱だったり障害を持っていたりすると, そうした機械の操作さえ別世界の話となる.

情報技術の進歩によって,大衆が利用できる情報システムや情報サービスの水準は向上した.しかしながら,こうした技術の可能性を拡大することに深く結びついている我々技術者は,高齢者や障害者が健常者と同じように親しめるシステムを, 更に使い易くすることに真正面から挑戦している.

技術者というものは, 訓練を通じて難問を解決することが自分達の役割だと自覚しているので, 自らの発明の才を活用するという, この困難な役割に大変適している.

この小冊子は公衆が利用する端末機の概念や設計ならびに操作に関与する全ての技術者に専門家としての責任を強く自覚して貰うため王室公認の全英盲人協会(Royal National Institute for the Blind)が主体となって作成した時宜を得たものである.

技術者協議会理事長

〔表紙裏〕


利用禁止ですか? 誰でも利用できる公衆用端末機の設計情報
            John Gill著 福祉システム研究会訳

目次

  • 公衆用端末機
  • 万人向け設計方針
  • 障害者数
  • 公衆用端末機に関する問題
  • 端末機の所在表示とアクセス
  • カードシステム
  • 外観,ラベルと取扱説明
  • 対話式画面
  • 操作説明
  • キーパッド
  • タッチ式画面
  • 貨幣やカード, 領収書の取り出し
  • 活字書体と視認性
  • チェックリスト
  • 刊行物
  • ウェブサイト
  • 標準規格
  • 汎欧州障害者組織
  • 他の情報源


謝辞

多大のご協力を得た下記の各氏に感謝する.(欧文氏名省略)
写真は下記の各社のご好意で提供されたものである. (欧文社名省略)
著者のJohn Gill 博士は Royal National Institute for the Blind (全英盲人協会)の主任科学者である.

連絡先(省略)

本書はhttp://www.eyecue.co.uk/patsでも参照可能.
ISBN 1 86048 014 4, 1997/5刊, 1998/3改訂装丁:Laker Sharvill Design Associates

〔裏表紙内側(表3)協会のロゴと「失明に挑戦する」という文章をこの頁に移動する。

本書は全英盲人協会が INCLUDEを代表して刊行した. (訳注:同協会は民間団体である.名誉称号であるRoyal の訳は難しいので省かせて頂いた).


「日本語版刊行の経緯と謝辞」

本書の原本は, 公衆端末機のあるべき姿を極めて分かり易く解説したGill博士の力作である. 想定読者は機器設計者であるが,障害を持つ利用者や関係者にとっても有益な情報源である.

筆者は通商産業省の「障害者等情報処理機器アクセシビリティ指針」の制定と普及に長らく関わってきた. この指針も本来は機器設計者向けのものではあるが, 最終利用者である障害者や高齢者が無関心のままでは普及は覚束ないことを全国行脚して学んだ. 本書は障害者や高齢者の啓発に大変役立つと思われるが,なるべく多くの人に読んで貰うためにはどうしても日本語に翻訳する必要がある.そこで,Gill博士の承諾を得て福祉システム研究会会員有志が翻訳を進め,ついに完成することができた.

翻訳にあたっては, 生硬な訳と言われるのは覚悟の上で, 原文のニュアンスをなるべく忠実に伝えるよう努力した. しかし, 彼我の文化の違い故に直訳では意味が通じないと思われる場合は,大胆に日本風の表現に変え, かつ, 訳注を挿入した.原文はインターネットを利用すれば簡単に入手できるので, 英語に堪能な方は併読して頂きたい。
自己満足と言われそうだが, 素人の作品にしては, まずまずの出来栄えが得られたのは大勢の方のご支援の賜物である. まだバグが残っている可能性はあるが, 万一の場合は研究会のホームページで知らせる予定なので多少の瑕疵は筆者等の努力に免じてご容赦願いたい.

日本語版刊行に際して,一方ならぬお世話になった方々に厚くお礼申し上げる. 多すぎて全員の名前は無理であるが, 翻訳者や資金面でご協力頂いた企業に関しては,ご尊名をここに記すことで感謝の意を表させて頂く. また, 印刷に関しご尽力頂いた岩岡印刷株式会社の岩岡専務にも深く感謝する.

平成10年7月吉日

翻訳者を代表して,

福祉システム研究会会長 工学博士 太田 茂 (E-mail:ohta85af@gmail.com)
〔太田茂略歴〕1965年京都大学工学部卒業後,富士通?鞄?社. 1985年福祉システム研究会設立. 1991年から川崎医療福祉大学教授. 1998年から (社) 日本電子工業振興協会情報機器アクセシビリティ委員会委員長.

翻訳者名簿(アイウエオ順,所属ならびに敬称略)

市川熹, 井上潔, 梅田俊郎, 内山幹男, 新橋正典, 仲本博, 岸本俊夫, 堀内健司, 村井利夫, 望月朗, 森博之

刊行支援企業名簿(アイウエオ順)

OG技研株式会社,株式会社日立製作所,日本電気株式会社, 富士通株式会社

推薦の言葉

全英盲人協会Gill博士の"Access Prohibited?"の翻訳は, わが国の高齢化対応, 障害者対応に不可欠な一つの有力な考え方として, また, 今後のユニバーサルデザインの方向を示すものとして参考になる.
   社団法人 日本電子工業振興協会「情報機器アクセシビリティ委員会」

"Access Prohibited?"なるGill博士執筆の小冊子が福祉システム研究会の有志によって翻訳された. 銀行のATM などの公衆用端末機を障害者とともに使用するためのガイドラインをとりまとめたものである. ヨーロッパの話なので, 数値がすべて日本で適用できるものではないが, 根底にある「ユニバーサルデザイン」の理念は日本でも大いに参考になる. 翻訳者代表の太田氏は親しい友人で, 彼のこの分野への熱心な貢献を評価し, 本書を推薦する.

                    東京大学名誉教授 工学博士 宇都宮敏男

障害者にとって良い設計は, しばしば, 誰にとっても良い設計である.


訳注:accessには「接近」と「利用」の二つの意味がある.本書では, 後者の意味で使っている場合が多いが, その場合は「利用」と訳し, 接近の意味が含まれる場合には「アクセス」と訳した.


Kenji Horiuchi