公衆用端末機



公衆用端末機

通信技術は我々の日常生活において不可欠な道具である.銀行や住宅金融機関で現金取扱機 (訳注:原文はcash machine) を使う時,クレジットカード類(原文のcredit or debitcardは貸方/借方カードの意)を使って買い物をする時, 携帯電話を使う時, あるいは, リモコンでテレビを操作する時, 我々はいつも通信技術のお世話になっている.最近の情報やサービスの提供方法の進化は凄まじい.銀行や住宅金融機関はサービスを電子的に提供する新しい方法を開発中である.スマートカードが扱う情報はどんどん大きくなり, 電話会社はよりインタラクティブな通信機器を設計し, インターネットは蜘蛛の巣状の通信網を張り続け, デジタル放送の日程は目前に迫り, 政府は行政サービスを電子的手段によってもっと利用し易いものに変えようと企画している.

電子的サービスは我々の日常生活の一部になりつつある.大衆がこれらのサービスから恩恵を得るためには, 誰もが今も設計されつつある広範囲に及ぶ公衆端末機とやりとり (原文はinteract) できなければならない.公衆用の端末機は我々の生活環境を象徴するものとなるであろう.これまでは銀行や住宅金融機関, 交通機関などが公衆用端末機を使ってきたが,もっと多数かつ多様な端末機が図書館や郵便局, 健康サービス業, 政府機関等に登場することだろう.
社会に充分参画するためには,各自がセルフサービス端末機を使えるようにする必要があろう.人々がキーボードや画面, 電話の送受話機, スマートカード等を用いて情報を閲覧したり通信する必要性も次第に増すであろう.このような通信方法は若者や, 手の動きや視力や聴力が正常な人にとっては比較的容易なことであるが, 視覚障害者や聴覚障害者, 移動が困難な人や失読症患者はこうした情報やサービスの利用が著しく制限され, 時には, 極めて多くの人達との交流が出来なくなる可能性がある.

本書は端末機利用を困難にする障害の範囲を明らかにし, かつ,使いたい人は誰でも利用できる公衆用端末機の設計法に関する情報を提供する.

Kenji Horiuchi